看護師にとって、キャリアアップは大きな関心事です。しかし、50代ともなると新たな挑戦への不安も大きくなります。この記事では、50代の看護師に向けて、認定看護師になる方法や必要な流れ、費用などを解説します。認定看護師になるための手順や必要な準備を把握して、新しいチャレンジを成功させましょう。
認定看護師の基礎知識
認定看護師は、特定の看護分野で高度な知識と技術を持つ看護師です。看護の質向上を目的としており、資格認定機関は日本看護協会です。認定看護師の基礎的な知識として、下記を解説します。
- 認定看護師の種類と分野
- 専門看護師との違い
- 認定看護師になるメリット
認定看護師の種類と分野
患者のニーズに合わせた専門的なケアの提供を目的として、認定看護師にはさまざまな種類と分野があります。認定看護師の主な分野は下記のとおりです。
- がん化学療法看護
- 緩和ケア
- 集中ケア
- 救急看護
- 皮膚・排泄ケア
- 感染管理
- 糖尿病看護
- 不妊症看護
- 摂食・嚥下障害看護
- 小児救急看護
上記以外にも、新生児集中ケアや透析看護など多岐にわたる分野があります。認定看護師の資格を取得すると、特定の分野でより専門的なケアを提供できます。
専門看護師との違い
認定看護師と専門看護師の違いを理解して、自分のキャリアプランに合った資格を選びましょう。認定看護師と専門看護師の違いは、下記の表のとおりです。
項目 | 認定看護師 | 専門看護師 |
専門性 | 特定の看護分野に特化 | 認定看護師よりも広範囲 |
役割 | 実践、指導 | 実践、相談、調整、教育、研究 |
教育課程 | 6か月以上 | 修士課程で2年以上 |
必要な実務経験 | 5年以上 | 3年以上 |
資格認定機関 | 日本看護協会 | 日本看護協会 |
活動範囲 | 所属施設内のみで活動 | 所属施設外でも活動 |
給与 | 専門看護師より低い | 認定看護師より高給 |
認定看護師になるメリット
認定看護師になると、専門性の高い看護ケアを提供でき、患者のQOL向上に大きく貢献できます。認定看護師になる具体的なメリットは、下記のとおりです。
- キャリアアップできる
- 給与や待遇が向上する
- リーダーシップを発揮できる
- 他職種との連携を強化できる
- 自己実現や職業満足度が高まる
- 最新の医療知識や技術を習得できる
長年の経験を生かしつつ専門性を身に付けることで、職場内での発言力が増し、より良い医療環境作りが可能です。
認定看護師に必要な実務経験と資格要件
認定看護師になるには、一定の条件を満たす必要があります。認定看護師に必要な実務経験と資格要件を解説します。
必要な実務経験
認定看護師になるには、下記の実務経験が必要です。
- 看護師としての5年以上の実務経験
- 専門分野での3年以上の実務経験
- 直近5年で2,000時間以上の看護実績
上記の他にも、教育面での要件があります。具体的には、600時間以上の教育課程の修了や、専門分野に関する研究会や学会への参加です。認定看護師を目指す方は、実務面と教育面での要件を意識しながらキャリアを積む必要があります。
資格要件
認定看護師になる大前提として、看護師免許が必要です。看護師免許を持っていることで、看護師としての基本的な知識や技能があることを証明できます。認定看護師になるには、最終的に認定審査に合格する必要があります。認定審査では、学んだ知識と技術が実践で生かせるのか確認しましょう。
認定看護師になるまでの流れ
認定看護師になるまでの流れを、下記の4ステップに分けて解説します。
- 認定看護師教育機関に入学する
- 認定看護師教育課程を修了する
- 認定審査に合格する
- 認定証を取得する
認定看護師教育機関に入学する
認定看護師への第一歩は、認定看護師教育機関への入学です。入学する前に、21の専門分野から自分が希望する分野を選ぶ必要があります。専門分野の決定は将来のキャリアに大きく影響するので、事前にじっくり考えておきましょう。
認定看護師教育機関に入学するには、試験を受ける必要があります。一般的には筆記試験と面接があり、合格後に入学願書や必要書類の提出が必要です。看護師免許証のコピーや実務経験証明書などの必要書類は事前に確認しておきましょう。
入学が決まったら、入学金や授業料を支払って、入学の手続きが完了します。費用は教育機関によって異なるので事前に確認しておきましょう。教育機関では、6~12か月程度の講義や演習、実習に参加します。レポートの提出や試験もあるので、しっかり取り組まなければいけません。
認定看護師教育課程を修了する
認定看護師教育課程では、講義や演習を通じて、専門的な知識や技術を学び、実践的なスキルを身に付けます。期間は6~12か月程度が一般的です。教育課程では、各分野の専門家から直接指導を受けられます。課程を修了するには、出席要件を満たしたうえで、試験に合格しなければいけません。
教育課程では、最新の医療知識や技術、研究方法なども学べるので、看護師としての総合的な能力を高められます。同じ志を持つ仲間とも出会えるので、ネットワーク作りの機会にもなります。
認定審査に合格する
認定審査に合格するには、事前の準備と計画が必要です。申請書類に不備があると審査を受けられない可能性があるので、事前に確認し、期限内に提出しましょう。筆記試験対策では、過去の問題を解いて出題傾向を把握し、復習しておきましょう。以下の点に注意して筆記試験対策を進めるのがおすすめです。
- 専門分野の最新知識
- 関連法律・制度
- 看護倫理・医療安全
実技試験対策では、実際の看護場面を想定した練習を繰り返しましょう。本番に近い環境で練習すれば、緊張せずに実力を発揮できます。面接試験に向けて、自己PRや志望動機を簡潔に整理しておきましょう。面接官の質問にスムーズに答えられるように、想定問答を準備しておくのもおすすめです。
リラックスして試験に臨めるように、日頃から十分な睡眠をとって体調管理しておくことも重要です。
認定証を取得する
認定証を取得すれば、晴れて認定看護師としての活動を始められます。認定証を取得する流れは下記のとおりです。
- 認定の申請書類を提出する
- 審査料を支払う
- 書類審査と認定審査を受ける
- 認定登録料を支払う
認定証を取得した後も、継続的な学習と実践が求められます。5年後の更新時には、所定の手続きと更新審査が必要です。専門性の高い看護ケアを提供し続けるためにも、最新の知識や技術を維持し、常に学び続ける姿勢が求められます。
認定看護師になるための費用と支援制度
認定看護師になるには、教育課程の受講料や審査料など、一定の費用が必要です。認定看護師になるための費用や支援制度の解説は、下記のとおりです。
- 一般的な費用
- 奨学金制度
- 病院や団体の支援制度
一般的な費用
認定看護師になるための費用では、教育課程の受講料や関連する諸経費が大きな割合を占めています。一般的な総額は80~170万円程度です。認定看護師になるための具体的な費用と相場は、下記のとおりです。
項目 | 必要な費用相場 |
教育課程の受講料 | 60~120万円程度 |
教材費 | 5~10万円程度 |
交通費・宿泊費 | 10~30万円程度 |
認定審査料 | 5万円程度 |
登録料 | 2万円程度 |
更新料 | 3万円程度 |
上記の費用は、選択する教育機関や分野によって変動します。
奨学金制度
奨学金制度を利用すれば、経済的な負担を軽減し、学習に専念できる機会を整えられます。主な奨学金制度は、日本看護協会や各都道府県看護協会が提供する奨学金制度です。看護師のキャリアアップ支援を目的としているので、50代の看護師でも対象となる場合が多いです。その他の奨学金制度には、下記があります。
- 病院や医療機関独自の制度
- 地方自治体の制度
- 民間団体の制度
奨学金には給付型と貸与型があります。給付型は返済不要で、経済的な負担がありません。返済免除制度がある貸与型奨学金もあるので、条件をよく確認しておきましょう。奨学金制度には、社会人向けや経済的困難者向けもあります。自分に合った奨学金がないか探してみましょう。
複数の奨学金を併用できることもあるので、幅広く情報収集しておくのがおすすめです。奨学金の他に、教育ローンの選択肢もあります。金利や返済条件を確認して、より自分に合った方法を選びましょう。
病院や団体の支援制度
多くの病院では、認定看護師の育成に積極的に取り組んでいます。具体的な支援制度には、下記があります。
- 学費の補助制度
- 研修費用の補助制度
- 認定看護師の育成プログラム
- 給与や手当の優遇措置
- 勤務時間の調整や特別休暇などの措置
病院や団体の支援制度を活用すれば、経済的な負担だけでなく、仕事と学業の両立も可能です。専用ポジションの設置や昇進制度の整備など、認定看護師取得後のキャリアパスを明確にしている病院もあります。支援制度の内容は病院や団体によって異なるので、詳細をよく確認しておきましょう。
認定看護師になるうえで注意すること
認定看護師になるうえで注意すべきことは、下記のとおりです。
- 時間と費用がかかる
- 家族や職場の理解と協力が必要
- 継続的に学ぶ意欲が必要
時間と費用がかかる
認定看護師になるには、相当な時間と費用がかかります。教育課程の受講には1年程度の期間が必要で、実務経験や準備期間を含めると2~3年以上かかることもあります。教育課程の受講料は100万円以上必要なのが一般的で、関連する諸経費も加えると、費用の総額は決して小さくありません。
勤務しながら資格取得を目指す場合は、時間や精神的な負担も大きくなります。資格を取得した後も、継続的な学習と更新も必要です。認定看護師を目指すときは、時間と費用を長期的な視点で検討して、慎重に判断しましょう。
家族や職場の理解と協力が必要
認定看護師の資格取得には、多くの時間と労力が必要になります。50代の看護師が認定看護師を目指す際は、家族や職場の理解と協力が欠かせません。家族には資格取得の意義を説明し、学習時間の確保や資格取得に必要な費用の理解を得ましょう。
家事や育児の分担を再検討して、家族全員で協力する体制を整えておくのも重要です。職場では、上司や同僚に資格取得の意思を伝え、勤務体制や休暇取得の協力を仰ぎましょう。資格取得後のキャリアプランを共有し、職場全体でサポートする雰囲気を作ることも重要です。
職場の支援制度や奨学金制度の利用も検討しましょう。家族と職場の理解と協力があれば、精神的な負担を減らして前向きに取り組めます。
継続的に学ぶ意欲が必要
認定看護師として活動していくには、継続的に学ぶ意欲が必要です。医療技術や知識は日々進歩しているので、常に最新の情報を取り入れる姿勢が欠かせません。認定看護師として活動していく際は、下記の取り組みが求められます。
- 定期的な研修や学会への参加
- 専門書や医療雑誌の購読
- オンラインセミナーの受講
上記の活動を通じて、自己研鑽の習慣を身に付ける必要があります。同僚や他の医療専門家との情報交換も、知識を広げる良い機会です。自分の専門外の関連知識も幅広く学ぶことで、より総合的な視点を持てます。
患者のニーズや医療環境の変化に柔軟に対応する能力は、継続的な学習によって養われます。認定看護師としての価値を高めるためにも、継続的に学ぶ意欲は重要です。
認定看護師になるうえでよくある質問
認定看護師になるうえで下記のよくある質問を解説します。
- 認定看護師の試験は難しい?
- 認定看護師の資格更新は必要?
認定看護師の試験は難しい?
認定看護師の試験は、合格率70~80%程度で、一般的な国家試験に比べるとやや難しいのが実情です。試験は筆記試験と実技試験の2段階で実施され、筆記試験では多肢選択式と記述式の問題が出題されます。
実技試験では、実際の看護場面を想定したシミュレーションが行われるため、専門的な知識だけでなく実践的なスキルも必要です。認定看護師になるには、十分な準備期間を設けて、計画的に学習していく必要があります。過去問題を分析し、模擬試験を活用して、試験の傾向や自分の弱点を把握しましょう。
実務経験を生かした実践的な学習をしておけば、実技試験対策にもなります。不合格の場合でも、翌年以降に再受験できます。専門性の高い資格なので難易度は高めですが、しっかりと準備すれば合格は十分に可能です。
» 日本看護協会 認定看護師(外部サイト)
認定看護師の資格更新は必要?
認定看護師の資格は、5年ごとに更新手続きをする必要があります。更新手続きの具体的な流れは下記のとおりです。
- 日本看護協会に申請書類を提出する
- 更新費用を支払う
- 研修を受講する
- 実践報告の審査を受ける
専門性の維持・向上と質の高い看護実践のためにも、資格の更新は重要です。定期的な更新手続きにより、常に最新の知識と技術を身に付けられます。
まとめ
50代の看護師にとって、認定看護師を目指すことはキャリアアップの有効な選択肢の一つです。専門的な知識と技術を身に付けて、より高度な看護ケアを提供できるようになります。認定看護師になるには、相当な時間と費用が必要です。活用できる奨学金制度や病院の支援制度は、積極的に利用しましょう。
資格取得には、家族や職場の理解と協力が欠かせません。認定看護師は、継続的に学ぶ意欲があれば、50代でも十分に挑戦する価値がある資格です。専門的なスキルを磨き、看護師としての価値を高めて、自身のキャリアに新たな可能性を広げましょう。
» 看護師の種類は何がある?仕事内容や資格取得方法など違いを解説