看護師として長年働いてきた方にとって、専門看護師になるというキャリアアップは魅力的な選択肢です。専門看護師は50代でも十分に挑戦できる資格ですが、情報不足のために不安を感じる人も多いです。この記事では、50代の看護師が専門看護師を目指す方法について詳しく解説します。
記事を読めば、専門看護師になるための具体的な手順や必要な条件、注意点などを明確にすることが可能です。
専門看護師の基礎知識
専門看護師の基礎知識について、以下の3点を解説します。
- 専門看護師の役割
- 専門看護分野の種類
- 認定看護師との違い
専門看護師の役割
専門看護師の役割は、高度な看護実践を行うことです。患者や家族に直接的な看護を提供するだけでなく、複雑な症例のマネジメントも行います。具体的な役割は、以下のとおりです。
- 看護スタッフへの指導や相談
- 看護実践の研究活動
- 倫理的な問題への対応
- 他職種との連携や調整
- 専門分野における教育プログラムの開発
- 政策提言
専門看護師は、最新の知識や技術を導入し、普及させる役割を担います。高度な専門性を生かし、組織全体の看護の質の向上に貢献できるのが特徴です。
専門看護分野の種類
専門看護師は、選択した分野で高度な知識と技術を身に付け、質の高い看護を提供することが必要です。専門看護分野には、以下のような種類があります。
- がん看護
- 精神看護
- 地域看護
- 老人看護
- 小児看護
- 母性看護
- 急性・重症患者看護
- 慢性疾患看護
- 感染症看護
- 家族支援
- 在宅看護
- 遺伝看護
- 災害看護
- 放射線看護
それぞれの分野では、特定の患者層や症状、状況に焦点を当てています。専門分野を選ぶ際は、自分の興味や経験、将来のキャリアプランを考慮することが大切です。地域のニーズや医療機関の方針も選択の参考にできます。
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認定看護師との違い
専門看護師と認定看護師には、重要な違いがあります。認定看護師との違いは、以下のとおりです。
資格の種類 | 専門看護師 | 認定看護師 |
求められる能力 | 高度な知識と実践能力 | 特定の看護分野でのスペシャリスト |
役割 | 特定疾患の専門知識と技術を活かし、高度な看護を提供 | 実践と指導に重点を置く |
取得期間 | 長い | 専門看護師よりも短い |
修士課程の修了 | 必要 | 不要 |
審査の難易度 | 高い | 低い |
給料や待遇 | 優遇される | 専門看護師よりも優遇されにくい |
専門看護師は高度な知識と実践能力が求められる一方、認定看護師は特定の看護分野でのスペシャリストです。専門看護師は複数の専門分野にまたがる総合的な実践が必要であり、研究能力や管理能力も求められます。
専門看護師になるには認定審査が必要
専門看護師になるために必要な認定審査について、以下の3点を解説します。
- 実務経験の要件
- 看護系の大学院の修了
- 認定審査の概要
実務経験の要件
認定審査を受けるには、以下の要件を満たすことが必要です。
- 5年以上の実務経験
- 3年以上の専門看護分野経験
- 600時間以上の実践時間
実践時間には看護実践だけでなく、教育や相談、調整、研究などの活動も含まれます。注意すべき点として、認定審査の申請時点で実務経験の要件を満たしている必要があります。経験年数は常勤換算で計算されるため、パートタイムで働いている場合は注意しましょう。
看護系の大学院の修了
看護系の大学院を修了することも、専門看護師になるための重要な要件です。修士課程または博士前期課程を修了している必要があります。専攻分野に関する専門教育課程を含む、26単位以上の履修も必要です。大学院のカリキュラムは、専攻分野の専門科目と共通科目で構成されています。
共通科目には看護理論や看護研究、コンサルテーション論などが含まれます。専門看護師を目指す場合は、日本看護系大学協議会が認定した専門看護師教育課程を持つ大学院がおすすめです。看護系の大学院のカリキュラムは通常2年間ですが、社会人向けの長期履修制度を設けている大学院もあります。
大学院修了後は修士号(看護学)を取得できますが、修了後すぐに専門看護師認定試験を受験できるわけではありません。大学院での学習と並行して、臨床実践も必要です。大学院での学びは専門知識を深めるだけでなく、研究能力や問題解決能力を高める機会にもなります。
認定審査の概要
専門看護師の認定審査は、書類審査と筆記試験の2段階で行われます。認定審査の目的は、看護師としての高度な専門性を評価するためです。書類審査では、実務経験や教育課程の修了、研究業績などが評価されます。筆記試験では、専門分野の知識や実践能力が問われます。認定審査の実施時期は、年1回、通常は6月頃です。
合格率は約70%となっていますが、分野によって異なります。認定審査の受験料は、50,000円程度です。合否の結果は、約2か月後に通知されます。不合格の場合でも、翌年以降に再受験できます。
専門看護師になるには?必要な流れを解説
専門看護師になるために必要な流れは、以下のとおりです。
- 実務経験を積む
- 大学院で学ぶ
- 認定審査に合格する
- 認定証を取得する
実務経験を積む
専門看護師になるためには、臨床現場で5年以上の実務経験が求められます。希望する専門分野では、3年以上の実践経験が必要です。実務経験には、以下の活動が含まれます。
- 研修や講習会への参加
- 症例研究や学会発表の実績
- 多職種連携や指導的役割の実績
専門知識とスキルを継続的に更新し、患者ケアの質向上に貢献することが大切です。実務経験によって、倫理的な判断力や問題解決能力、リーダーシップスキルも養えます。
大学院で学ぶ
専門看護師になるためには、看護系大学院の修士課程に進学する必要があります。専門看護師(CNS)コースを選択することで、高度な知識と技術の習得が可能です。大学院で学ぶ内容は、以下のとおりです。
- 専門分野に関する深い知識
- 高度な看護技術
- 研究方法論
- 統計学
- 臨床実習
大学院では、2年間のプログラムで38単位以上を取得する必要があります。現役の看護師にとっては仕事との両立が課題になるため、社会人向けのコースも用意されています。オンライン授業や土日開講など、柔軟な学習形態の選択も可能です。大学院での学習の特徴は、教授や専門家から直接指導を受けられる点です。
最新の医療技術や看護理論を学び、リーダーシップやコンサルテーション能力も養成できます。他の学生との交流や情報交換も貴重な経験です。
認定審査に合格する
認定審査に合格するためには、十分な準備と努力が必要です。認定審査の対策として、過去問題を解いたり、模擬試験を受験したりできます。筆記試験では、多肢選択式と記述式の問題が出題されます。専門的な知識だけでなく、実践能力や研究能力も問われるため、幅広い学習が必要です。
面接試験では、専門分野に関する口頭試問があります。日頃の看護実践を振り返り、自分の考えを論理的に説明できるよう準備しておく必要があります。認定審査に不合格になっても、翌年以降の再受験が可能です。認定審査は高度な専門性が求められるため、十分な準備期間を設けましょう。
認定証を取得する
認定審査に合格したら、認定証を取得し、専門看護師としての活動を開始できます。認定証を取得するためには、日本看護協会へ必要な申請書類の提出が必要です。審査結果の通知を受け取った後は、認定証の発行を待ちます。認定証を受け取ったら、有効期間を確認してください。通常、有効期間は5年間です。
更新手続きの方法も把握しておくと安心です。認定証は安全な場所に保管しましょう。必要に応じてコピーを作成し、雇用先や関係機関に提示できるよう準備しておくことをおすすめします。
専門看護師になるための費用と支援制度
専門看護師になるための費用と支援制度について、以下の点を解説します。
- 大学院の学費
- 認定審査の費用
- その他関連する費用
- 奨学金制度や支援制度
大学院の学費
大学院の学費は、国立大学の場合は年間約54万円、私立大学では年間約100~150万円かかるのが一般的です。2年間の修士課程全体では、総額100~300万円ほどの費用がかかります。通信制大学院を選択すると、年間約50万円と比較的安価に抑えられる場合があります。
大学院の学費を抑える他の選択肢は、以下のとおりです。
- 長期履修制度
- 奨学金・教育ローン
- 勤務先の学費補助制度
- 税制上の教育費控除
入学金や施設設備費などの諸経費も別途必要になるため、事前に詳細な費用を確認することが大切です。予算に応じて適切な大学院を選ぶことで、効率的な資格取得ができます。
認定 審査の費用
認定審査の費用は総額110,000円(税込)で、審査料55,000円と認定料55,000円が含まれます。再受験の場合は、審査料のみが必要です。認定後の更新時にも費用が発生する点にも注意しましょう。認定審査の費用は決して安くはありません。
しかし、専門看護師として認定されることで、キャリアアップや収入アップにつながる可能性があります。長期的な視点で考えると、十分に価値がある投資です。
その他関連する費用
専門看護師を目指す過程では、以下のような関連費用がかかります。
- 教科書や参考書の購入費
- 学会や研修会の参加費
- 交通費や宿泊費
- 機器購入費
- インターネット接続費用
- 論文作成や印刷のための費用
- 健康診断料
- 実習時に必要な予防接種費用
予算を立てて計画的に準備することで、負担を軽減できます。かかる費用は個人によって異なるため、自分の状況に合わせて具体的に計算することが大切です。
奨学金制度や支援制度
50代の看護師が専門看護師を目指す際に利用できる奨学金制度や支援制度は、多数あります。以下のような制度の利用を検討できます。
- 日本学生支援機構の奨学金制度
- 看護職員修学資金貸与制度
- 病院や医療機関による奨学金制度
- 地方自治体による看護師向け奨学金制度
- 民間団体による看護師向け奨学金
- 大学院独自の奨学金制度
- 看護協会による研修費用助成制度
- 勤務先による学費補助制度
- 専門実践教育訓練給付金制度
- 看護師の特定行為研修に対する助成金制度
- 看護職員キャリアアップ支援事業
- 専門看護師育成支援プログラム
クラウドファンディングによる資金調達や教育ローンの利用も、選択肢の一つです。制度を上手に活用すれば、経済的な負担を軽減しながら専門看護師を目指せます。各制度には申請条件や利用制限があるため、詳細を確認してから申し込みましょう。
専門看護師になるうえで注意すること
専門看護師になるうえで注意するべきことは、以下の5点です。
- 大卒の資格が必要である
- 仕事との両立が難しいことがある
- 近隣に大学院がないこともある
- 家族や職場のサポートが必要である
- 資格の更新が必要である
大卒の資格が必要である
専門看護師になるためには、看護系大学の学士号(大卒資格)が必要です。専門学校卒の看護師は、まず看護系大学を卒業する必要があります。通信制や夜間の大学で働きながら学士号を取得する選択肢もあります。大卒資格は、専門看護師になるために必要な大学院入学の条件です。
学士号取得には時間とお金がかかるため、長期的な視点で計画を立てましょう。一部の大学では、学士号取得と大学院進学を同時に目指せるプログラムも用意されており、効率的に資格が取得できます。
仕事との両立が難しいことがある
専門看護師になるうえで、仕事との両立の難しさを感じる人は多いです。以下の点が課題として挙げられます。
- シフト勤務と授業スケジュールの調整
- 勉強時間の確保
- 体力的・精神的な負担
長期的な計画と自己管理を徹底することで、課題を乗り越えられます。職場の理解と協力を得ることも重要です。休暇や勤務時間の調整を行い、効率的に時間を使いましょう。家族のサポートを得ながら、生活全体のバランスを取ることが大切です。
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近隣に大学院がないこともある
居住地域によっては、希望する専門分野のカリキュラムを提供する大学院が近隣にないことがあります。遠方の大学院に通う場合は、長距離通学や転居が必要です。代替策として、オンラインや通信制プログラムの選択も検討できます。
地域によっては専門分野の選択肢が限られる可能性もあるため、事前に十分な情報収集が必要です。自分の状況に合わせて最適な選択をすることをおすすめします。
家族や職場のサポートが必要である
長期的な学習と資格取得の過程では、家族や職場のサポートが欠かせません。家族のサポートとして、勉強時間を確保するための家事分担や経済的な負担への協力が重要です。職場では、教育支援制度の活用やメンターからのアドバイスが役立ちます。
同じ目標を持つ仲間とのネットワークを構築し、情報交換や励まし合いの機会を持つことも大切です。サポートを十分に活用することにより、ワークライフバランスを維持しながら資格取得に取り組めます。
資格の更新が必要である
専門看護師の資格を維持するためには、定期的な更新が必要です。資格の更新は5年ごとに行われます。更新要件には、以下が挙げられます。
- 専門看護師として活動した実績の提出
- 研修会や学会への参加
- 更新審査の合格
- 更新料の支払い
要件を満たさないと資格が失効してしまう可能性があるため、計画的な準備が必要です。更新の要件は変更される場合もあるため、常に最新の情報を把握しておくことをおすすめします。
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まとめ
50代の看護師が専門看護師を目指すには、実務経験を積み、大学院で学び、認定審査に合格する必要があります。大卒の資格がいることや仕事と学業の両立が難しいことなどは、資格取得の課題です。ワークライフバランスを維持しながら資格取得に取り組むためには、家族や職場の理解とサポートが欠かせません。
専門看護師を目指すには、努力や費用の投資が求められるため、長期的なキャリアプランをしっかりと立てることが大切です。50代の看護師にとっての新たな可能性として、専門看護師の資格取得を検討することをおすすめします。