
親の介護と孫育て、仕事も続けたい。50代看護師が選んだ新しい働き方
「このままの働き方で、あと何年続けられるだろう」
夜勤明けに感じる体の重さ、ふと湧いてくる将来への不安、そして家族のこと。50代になると、看護師として積み上げてきたものがある一方で、これまで通りが難しくなる瞬間が増えてきます。
私は57歳の看護師です。長年勤めた病棟を退職し、大阪・関西万博のアテンダントを経て、今は市立病院の地域医療連携室で、看護師枠の事務として働いています。両親とは同居していて、日常生活は家の中で過ごせる程度、家事はほとんど私の担当しています。
「介護、そして自分の仕事」——気づけばすべてを両立させている毎日ですが、ここに来るまでには、働き方についてずいぶん悩みました。今日は、同じように迷っている方に向けて、私の選択と工夫をお話しします。
この記事は、「もう無理かもしれない」と感じている40代後半〜50代の看護師さんに読んでほしい内容です。病棟を辞めたい気持ちと、辞めたあとの不安の間で揺れているあなたに、ひとつの選択肢を示せたら嬉しいです。
病棟を辞めたのは、ひとつの出来事ではなく、小さなサインの積み重ね
私が病棟を離れる決心をしたのは、決定的な何かがあったからではありません。じわじわと積み重なった小さなサインが、ある日「もう限界だ」と教えてくれたのです。
夜勤明けに、家の階段がやけに長く感じる。立ちっぱなしだった膝が、朝起きたときに痛む。両親の通院日にどうしてもシフトが合わせられない——。そんなことが、じわじわと自分を追い詰めていました。
体力的にきつい。それはずっと前から感じていました。でも、それ以上に辛かったのは「家族に何かあったとき、すぐに動けない自分」でした。
50代で“新しい働き方”を探す難しさ
いざ転職を考え始めると、思った以上に選択肢が限られていることに気づきました。
日勤だけの求人は人気で、すぐに埋まる。訪問看護は興味があったけれど、一人で判断する責任の重さに尻込みしてしまう。クリニックは意外と体力勝負のところも多い——。
何より、50代という年齢がどうしても自分の中でブレーキになりました。「今さら新しい場所で、ちゃんとやっていけるだろうか」。そんな不安がぐるぐると回って、なかなか一歩を踏み出せませんでした。
最初の一歩は、万博アテンダントという“意外な選択”
病棟を辞めて最初に選んだのは、多くの人から「意外」と言われる仕事でした。大阪・関西万博のアテンダントです。
看護師とは毛色の違う仕事ですが、接客の中で人と関わる温度感は、看護に通じるものがあります。期間限定の働き方なので、生き方を切り替える“助走期間”にちょうどよかったのも大きな理由でした。
英語は得意ではなく、接客も未経験。正直、応募するときは手が震えました。でも、やってみて思ったのは「無理だと思っていたのは、自分の頭の中だけだった」ということです。
毎日、世界中の人と短い言葉を交わしながら働いた半年間。看護師として培った「相手をよく見る力」は、ここでも確かに役に立ちました。年齢を重ねたからこそ発揮できる落ち着きや安心感があることを、この仕事を通じて改めて実感しました。
そして今、地域医療連携室で“看護師の新しい形”を始めた
万博が終わって、次の働き方を考えたとき、私が選んだのは市立病院の「地域医療連携室」でした。看護師枠で採用され、いま担当しているのは事務のお仕事です。
地域医療連携室は、入院・退院の調整や、病院と訪問看護ステーション、介護施設、クリニックとの橋渡しをする部署です。患者さんを直接ケアするわけではありませんが、看護師としての知識と経験がそのまま活きる場所でもあります。
夜勤はありません。立ちっぱなしの業務もほとんどありません。でも、電話口で伝わってくる患者さんやご家族の不安に寄り添うとき、「ああ、これは看護の延長なんだ」と感じる瞬間が何度もあります。
同世代の看護師さんに伝えたいのは、「看護師資格を活かせる働き方は、病棟だけじゃない」ということです。地域医療連携室、外来、健診センター、保健指導、治験コーディネーター——体力的にラクで、かつ経験が評価される仕事は確かに存在します。知らないだけで、選べないだけの選択肢がたくさんあるのです。
家族を支えながら働くために、私が意識している5つのこと
両親と同居して家事全般を担いながら、孫のサポートもしつつ、外で働く——。これを続けるために、私なりに工夫していることがあります。
1. 食事は“作り置き”前提で組み立てる
両親は自分で温めて食べられます。だから私は、温める手間がかからないメニューを中心に、週に何度かまとめて作っています。完璧を目指さないことが、続けるコツです。
2. 家事を“見える化”する
洗濯、掃除、買い物、通院の付き添い——やることをメモにして冷蔵庫に貼っています。自分の頭の中で全部管理しようとすると、それだけで疲れてしまいますから。
3. シフトは“家族の予定”とセットで決める
両親の通院、孫の行事、そして自分の仕事。カレンダーに全部書き込んで、先に家族の予定を埋めてから仕事のシフトを調整します。逆にすると、必ずどこかで無理が出ます。
4. “完璧”を手放す
以前は「全部きちんとやらなきゃ」と思っていました。でも今は、手を抜けるところは抜くと決めています。その方が、結果的に家族にも優しくいられます。
5. 自分の時間を、ほんの少しでも確保する
疲れ切った夜、15分だけでもお茶を淹れて座る。それだけで、次の日の自分が少し違います。自分を労わる時間は、家族のためにも必要な時間だと思っています。
「もう遅い」と思っているあなたへ
50代で新しい働き方に挑戦するのは、勇気が要ります。私も正直、怖かったです。
でも今、振り返って思うのは「遅すぎることなんてなかった」ということです。体力的にきつい働き方を無理して続けるより、自分と家族を大事にできる働き方に切り替える方が、ずっと長く看護師でいられます。
介護も、孫育ても、家族のサポートも、自分の仕事も。全部を完璧にやる必要はありません。でも、自分の働き方を見直すことで、全部を“それなりに”続けることはできます。
そして何より伝えたいのは、家族のために自分を後回しにしてきた方ほど、一度立ち止まって「自分はこれからどう働きたいか」を考える時間が必要だということです。それは、わがままでもなんでもありません。長く家族を支え続けるための、大切な準備です。
次回は、50代の看護師さんが転職で後悔しやすいポイントについて、私の経験をもとに書いていきます。一緒に、これからの働き方を考えていきましょう。