知っているのに後回しにしていた、私自身の体のこと
「看護師なんだから、健康管理はバッチリなんでしょ?」——そう言われるたびに、少し苦笑いをしてしまいます。
患者さんの体のことは真剣に考えるのに、自分のこととなると途端に後回しになる。それが長年の病棟看護師だった私の、正直なところでした。夜勤明けの食事はコンビニのおにぎりやパン、簡単なもので済ませて、休日は疲れ果てて一日中横になっている……そんな生活を続けてきました。
57歳で病棟を離れ、2025年の万博アテンダント、そして2026年4月から地域医療連携室での勤務と、働き方が変わったこの2年間で、ようやく「自分の体に向き合う」時間が生まれました。規則正しい生活がようやく戻ってきたという感じです。今回は、50代から私が実践している健康習慣と、後回しにし続けた結果どうなったかを、率直にお伝えします。
「知っているから大丈夫」という思い込みが一番危ない
看護師という仕事は、知識の面では恵まれています。生活習慣病のリスクも、食事と運動の重要性も、睡眠不足が免疫に与える影響も、頭では分かっています。でもその「知っている」が、かえって落とし穴になることがあります。
「私は看護師だから、症状が出たらちゃんと対処できる」「多少の無理はわかって続けているんだから大丈夫」——そんなふうに思っていませんか?私はずっとそう思っていました。
実際には、50代の体は30代・40代とは違います。夜勤を重ねてきた疲労は積み重なり、更年期の変化は思ったより早く、じわじわとやってきます。「自覚症状が出てから対処する」では間に合わないことが増えてくる年代なのです。
私はこうでした——50代の健康診断で、中性脂肪の数値が基準値以上になり、血糖値も高くなってきていました。それまで標準値だったのに。あのときの「あ、自分も例外じゃないんだ」という気づきは、今でも鮮明に覚えています。
夜勤がなくなってわかった、睡眠の大切さ
病棟を辞めて一番変わったのが、睡眠です。夜勤をしていたころは、起きている時間と眠る時間が毎週バラバラでした。夜勤明けに眠れない、休みの日にまとめて寝ようとしてもうまくいかない、という悪循環が長く続いていました。
寝れなくて、身体が辛くて藁にもすがる気持ちで酸素カプセルに通ったこともあります。夜勤明けに酸素カプセルに入って30分寝て帰宅するということを続けていました。
地域医療連携室に移ってからは、毎朝ほぼ同じ時間に起きられるようになりました。最初の1~2か月は「こんなに寝ていいのか」というくらい眠かったのですが、それが落ち着いてからは、明らかに午後の集中力が違います。
今は「夜10時には布団に入る」を目標にしています。完璧にはできない日もありますが、目標があるだけで行動が変わります。スマホを見る時間を意識して減らし、寝る30分前はできるだけゆったりした時間を過ごすようにしました。そして朝は5時すぎにはスッキリ目覚めます。身体はすごく楽になりました。
地域医療連携室では、まだ慣れていないこともあり、覚えることもいっぱいあるので、身体的より精神的にしんどいなと思うことが多いので、テレビを見ながら寝落ちしてしまったりしています。
50代の体は睡眠の乱れを回復するのに時間がかかります。「今さら睡眠を整えても……」と思わずに、まず「寝る時間を決める」一歩から始めてみてください。
更年期と向き合う——症状を「しかたない」で終わらせない
50代女性の多くが経験する更年期の変化。ホットフラッシュ、だるさ、気分の波、関節の違和感……。看護師として患者さんに「更年期症状には婦人科受診を」とお伝えしてきたのに、自分自身は「仕事が忙しいから」「更年期なんてみんな通る道だから」と受診を先送りにしていました。
私の症状は頭のてっぺんから急に汗が吹き出すような感じになることと、身体のだるさ、イライラ感が症状でした。今はイライラすることも減り、症状は落ち着いています。
更年期は「症状に耐える時期」ではなく、「自分の体を知り、整える時期」だと今は思っています。婦人科への敷居が高いと感じる方もいるかもしれませんが、更年期外来や女性外来は、相談しやすい雰囲気のところが増えています。まず「行ってみる」という選択を、ぜひ自分に許してあげてください。
無理なく続けられる、私の3つの健康習慣
「完璧な健康管理」を目指すと続きません。私が今も続けられているのは、ハードルをとことん下げた3つの習慣です。
① 朝のストレッチ5分
病棟では立ち仕事が多く、腰と膝に負担をかけ続けてきました。今は起床後、布団の上で5分だけ軽く体を伸ばすことを続けています。「5分だけ」と決めているので、気持ちが乗らない日でも続けられます。
② 昼休みに外を5分歩く
連携室の勤務は座り仕事が多いため、意識して体を動かす機会が少なくなりました。昼休みに院内から出て、5分だけでも外の空気を吸いながら歩くことで、午後の気分がリセットされます。
③ 週1回の散歩とお疲れチェック
普段の通勤は自転車です。仕事中は座り仕事が多くなるため、休みの日にはできるだけ車や自転車を使わずに歩くことを心がけています。そしてカレンダーに、体調がすぐれなかった日や便秘が続いた日など身体に変化があった時には印をつけるようにしています。そうすることで、自分の体調の変化に気づくことができています。
「自分の健康は後回し」から卒業するために
看護師は「ケアする人」であることに慣れすぎて、自分をケアすることへの罪悪感を持ちやすい職種だと思います。「休んでいる暇はない」「もう少し頑張れる」——そうやって自分への小さなサインを見逃してきた方も多いのではないでしょうか。
50代は「健康の貯金を使い始める年代」だと実感しています。若いころに無理をした分、利息がついて返ってくる時期。でも今から少しずつ健康の積み立てを始めれば、60代・70代の体の動きやすさが変わってきます。
私はこうでした——年に1回は人間ドックを受けてはいたものの、要検査の項目があっても、自分の判断で再診に行かないままになってしまったり、行くことさえも忘れてしまっていました。健康資産は自分で作るもの。今からでも遅くないので、自分に向き合いたいと思います。
「自分の健康診断の結果を、今日もう一度見直してみること」。それが、50代からの健康管理の、一番シンプルな出発点だと思います。
次回予告
次回は「50代の孤独感とどう向き合う?——仕事も子育ても一段落した先にある「自分の時間」の使い方」をお届けする予定です。子どもが独立し、夜勤もなくなり、ふと「これからどう過ごせばいい?」と感じた経験——同世代の方に届けたいテーマです。またここでお会いしましょう。