コラム 悩み 看護師

家事を“見える化”する。

本ページはプロモーションが含まれます。

50代ワーキングナースの家事シェア術

「結局、ぜんぶ私がやってる気がする」——同世代の看護師仲間と話していると、必ずと言っていいほど出てくる言葉です。57歳になった今、市立病院の地域医療連携室で働きながら、両親と同居し、家事の多くを担っている私自身も、若い頃にはこのつぶやきを何度も飲み込んできました。仕事を持ちながら家のことを回すのは、それだけで毎日が小さなマラソンのようなものです。

ただ、ここ数年で少しずつ気づいたことがあります。家事は「誰が頑張るか」ではなく、「誰が・いつ・何を・どこまでやるのか」を家族で見える形にしておくと、ずっとラクになる、ということです。今日は、私が試行錯誤の末にたどり着いた家事の見える化と家族でのシェアの工夫を、同世代の仲間として、肩の力を抜いてお話ししてみたいと思います。

「全部やる人」をやめると決めた、ある夜のこと

病棟で夜勤に明け暮れていた頃、私はとにかく「家のことは私がなんとかする」と決め込んでいました。両親に頼むのは申し訳ない、自分が動けばすむ話——そう信じていた時期が、確かにあったのです。

転機は、ある夜の出来事でした。夜勤明けの体で台所に立ち、冷蔵庫を開けたまま、何を作るんだったかさえ思い出せず、しばらくぼんやり立ちつくしてしまったのです。あの瞬間、「このやり方では続かない」と、ようやく腹の底から納得できました。私はその夜、家族に正直に伝えました。「家事をひとりで抱え込むのは、もう限界かもしれない」と。そこから、我が家の家事シェアが少しずつ始まったのだと思います。

近くに住む妹の存在は、私にとってとても頼りになる存在でした。

見える化の第一歩は「家事の棚卸し」から

家事をシェアしようと思っても、最初は何から手をつけたらいいか分かりません。私がまずやったのは、家事の棚卸しでした。紙に「我が家で発生している家事」を片っ端から書き出してみたのです。炊事、片付け、洗濯、掃除、ゴミ出し、買い物、銀行や役所の手続き、両親の通院の付き添い……。書き出してみると、思っていた以上に種類が多く、「ああ、これだけのことを毎日回していたんだ」と、妙に肩の力が抜けたのを覚えています。

棚卸しのコツは、「自分が何気なくやっていること」まで、できるだけ細かく書き出すことです。ゴミ袋の補充や、調味料の在庫チェック、ストック品の管理など、誰にも気づかれない地味な家事ほど、見える化しないと「ありがとう」も生まれません。私はこの棚卸しのリストを、後で家族に見てもらう資料として大切に取っておきました。

冷蔵庫カレンダーとLINEで妹と「予定」を共有する

棚卸しの次にやったのは、家族みんなが同じ情報を見られるようにすることです。我が家では、冷蔵庫に大きめの月間カレンダーを貼り、私の勤務日、両親の通院を、一目で分かるようにしています。誰が見ても、その月の家全体の動きが分かる仕掛けです。

予定がある時には、妹に全面的にお願いしています。

もうひとつ大切にしているのが、妹とのLINEです。私のシフトと、家事のお願いごとを短くまとめて流すようにしています。「火曜は用事があるから、夕食の温めは父さんにお願い」「木曜の朝、ゴミ出しを娘にお願いしたい」——口頭で伝えるとつい忘れられてしまうことも、文字で残しておくと、あとから読み返せて行き違いが減りました。ちょっとした工夫ですが、家族の中にあった見えない遠慮が、ずいぶんほぐれた気がしています。

「お願い」を切り出す言い方を、自分なりに用意しておく

家事をシェアするうえで、地味に大事だと感じているのが、お願いの言葉です。「なんで手伝ってくれないの」と責める言い方になってしまうと、相手も身構えてしまい、結局は気まずくなって自分でやり直す、という悪循環に陥りがちです。私は何度も失敗した末、自分なりの「言い回しのテンプレート」を作るようにしました。

たとえば、「今日は私が早番で夕方バタバタするから、お米だけ研いでおいてもらえると助かる」、「今週ちょっと疲れてるから、土曜の掃除機だけお願いしてもいい?」など、理由具体的な範囲ありがとうの三点セットで伝えるようにしています。頼まれる側も、何をどこまでやればいいのかが分かれば、思っているよりずっと気軽に動いてくれるものです。

両親が「自分でできる」を応援する仕組みづくり

我が家の家事シェアの中で、もうひとつ意識しているのが、両親が自分でできる部分は無理に取り上げない、ということです。私は食事を作り置きで回していますが、温め直しや盛り付けは、両親自身にお願いしています。電子レンジの操作が分かりやすいよう、メモを冷蔵庫に貼り、ボタンの押し順をシンプルに書いておく。そんな小さな工夫だけで、両親は「自分でできた」という小さな自信を積み重ねていけるのです。

看護師として高齢の方々と接してきた経験から、「できることを取り上げない」ことが、心と体の元気を保つうえでとても大切だと感じています。家族介護も同じで、私が全部抱え込めば、見た目はラクに見えるかもしれませんが、両親の「自分でやれる」という感覚が、少しずつしぼんでしまう。そう思うと、見える化と家事シェアは、家族みんなの自立を支える仕組みでもあるのだと、最近は感じています。

完璧を目指さない。70点でゆるく回す

ここまでお話ししておいて何ですが、我が家の家事シェアは、決して完璧ではありません。頼んだはずの洗濯物がたたまれていなかったり、買い物リストが守られていなかったり、「結局自分でやり直す方が早い」と感じる場面もたくさんあります。それでも、最初から「70点で良し」と決めておくと、不思議と腹が立たなくなりました。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。家事の見える化は、一気にやろうとするとそれ自体が新しい家事になってしまいます。今日ご紹介した中から、ひとつだけでも「これならできそう」と思えるものを選んで、明日からの暮らしにそっと取り入れていただけたら嬉しいです。家のことを家族でゆるくシェアできるようになると、自分の心にも、ほんの少し余白が戻ってきます。その余白こそが、私たち世代が長く健やかに働き続けるための、一番の土台になる気がしています。

  • この記事を書いた人

きよたかナース

職業はフリー看護師。18年間飲食店経営。40歳から看護専門学校に入学し、43歳で看護師になる。がん専門病院に勤務し、循環器・脳外科・血管外科・消化管内科経験あり。特別病床担当。老健、クリニック経験あり。 50歳をこえると、フルタイムの働き方は体力的にもつらくなります。 プライベートと仕事を両立しながら、自由な働き方ができる看護師が増えればいいなと思い、看護師の転職や働き方について発信しています。

-コラム, 悩み, 看護師