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英語も接客も未経験。57歳で新しい仕事に飛び込んで学んだこと

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「面接に受かったはいいけれど、英語はほとんど話せないし、接客らしい接客なんてやったことがない。本当に大丈夫なのかしら」。万博アテンダントの採用通知をもらった晩、正直そう思いながら、私はふとんの中でスマートフォンの画面をぼんやり眺めていました。

57歳で病棟を辞めて、まったく畑違いの仕事に飛び込む。「やってみたい」という気持ちで動いた背中の裏側に、「うまくやれなかったらどうしよう」という不安も、正直ちゃんとありました。今日はその本音と、実際に飛び込んでみて気づいたことを、同世代の仲間として正直にお話しします。

「英語ができる人」だけが活躍できる仕事ではなかった

採用が決まってから仕事初日まで、私は英語が足を引っ張るのではないかとずっと心配していました。ネットで「万博 接客 英語」と検索しては、「英語ペラペラじゃないと無理だろうか」とため息をついていたくらいです。

ところが初日に現場に立ってみると、思っていたのとまったく違いました。お客さまに英語で何かを問われたとき、私が言えたのは "This way, please." や "Are you okay?" 程度の短い言葉だけ。でもそれで、驚くほど伝わったのです。

言葉が少なくても、笑顔で、体全体で「こちらですよ」と示せれば、相手はちゃんと理解してくれます。「英語が話せる」より「不安そうな人を見つけて、すぐに動ける」ことの方が、現場では何倍も必要とされていました。

接客初日、私が一番戸惑ったこと

英語よりも、私を戸惑わせたのは「笑顔を保ち続けること」でした。

病棟の仕事では、深刻な場面で無理に笑顔を作る必要はありません。患者さんの状況に合わせて、真剣な顔で話を聞いたり、静かに寄り添ったりすることが仕事のうちでした。ところが万博の接客現場では、会場を歩き回っているあいだ中、常に「どうぞいつでも声をかけてください」という表情をキープし続ける。これがなかなか慣れないのです。

初日の昼過ぎ、先輩スタッフに「まゆみさん、少し疲れた顔になってますよ」と、そっと声をかけてもらいました。鏡で自分の顔を見て、びっくりしました。病棟仕込みの「真剣な顔」が出ていたのです。

これは笑い話のようですが、私にとっては大きな発見でした。20年以上、病棟という場所で「専門家として真剣に向き合う顔」を鍛えてきた自分が、いかに笑顔を当たり前と思っていなかったか。接客の世界に入って初めて、それに気づかされたのです。

失敗から学んだ、「伝わる言葉」の使い方

もう一つ、入って間もない頃に失敗したことがあります。

あるとき、疲れた様子のご高齢の女性に「大丈夫ですか」と声をかけたら、「えっ、どこか具合が悪そうに見える?」と、少し不安そうな顔をされてしまいました。

看護師のつもりで言った「大丈夫ですか」が、受け取る側には「具合が悪く見えますか?」という意味に聞こえていたのです。病棟ではアセスメントのための問いかけが自然な言葉でも、日常の接客場面ではニュアンスが全然変わる。言葉の使い方って、場所によってこんなに違うのだと、その日の帰り道でしみじみ考えました。

それ以来、私は「大丈夫ですか」より「少しお休みになりますか?あちらにベンチがございますよ」という言い方を意識するようにしました。心配を問いかけるより、具体的な選択肢を提示する。すると、相手の表情がやわらかくなるのが分かるようになりました。

看護師の「くせ」が、意外と武器になった瞬間

失敗ばかりを書いてきましたが、もちろん看護師としての経験が思いがけず役に立った場面もたくさんありました。

一番印象に残っているのは、混雑した通路で、顔色の優れない年配の男性に気づいたときのことです。誰も足を止めていませんでした。でも私には、「あの歩き方は、ふらついている」とすぐに分かった。20年かけて目に刷り込んできた、患者さんのちょっとした変化への感度が、制服を変えても消えていなかったのです。

その男性に声をかけてベンチまで誘導し、水分補給をお勧めしたところ、「助かりました」と深くお礼を言っていただきました。看護師としての自分が、全然違う場所で、静かに仕事をした瞬間でした。

他にも、妊婦さんへの配慮の仕方、お子さんへの視線の合わせ方、外国の方への身振り手振りの使い方。こうした場面で、病棟で積んできた経験が、自然と体から出てきました。「資格を脱いで出てきた」のに、中身は何も変わっていなかった。そのことに、こっそり誇らしい気持ちになりました。

57歳で新しいことを学ぶのは「遅すぎる」のか

この経験を通じて、私が一番伝えたかったことが、このテーマです。

万博で働きはじめたとき、同期には20代の方もいました。英語も接客もずっとやってきた方々です。最初は「私だけ場違い」と思う瞬間もありました。研修でも、メモを取るスピードがみんなより遅い。新しいシステムの操作に手間取る。そういうことが、最初のうちは気になりました。

でも一ヶ月、二ヶ月と経つうちに、気づいたことがあります。私には、「失敗してもいい」という覚悟があった。もうキャリアの頂点を証明しなくていい。知らなかったことを素直に認められる。それが、学ぶ上でとても大切なことでした。

20代のスタッフが「こんなことも知らないの?」と思われることを恐れて聞けないことを、私は「57歳だもの、知らなくて当然」と開き直って聞けた。ベテランであることのプライドを一回手放したとき、学ぶ速度は年齢より「心の構え」の方がずっと大事だと実感しました。

次の一歩を考えている、50代のあなたへ

英語も接客も知らないまま、57歳で新しい仕事に飛び込んだ私が学んだのは、「準備が整ってから動く」よりも「動きながら整える」方が、50代の体と心には向いているということです。

どうせ不安は、始めてみないとなくならない。「もう少し英語ができたら」「もう少し若かったら」——そう思いながら動かない一年より、「よく分からないけどやってみよう」と飛び込んだ半年の方が、はるかに多くを教えてくれました。

私自身は、万博の半年を経て、2026年4月に市立病院の地域医療連携室へ移りました。一度外に出てから戻ってきた看護師として、同じ職場でも景色がまるで違って見えます。そのお話は、また次回ゆっくりさせてください。

次回予告

次回は、「地域医療連携室ってどんな仕事?看護師資格を活かせる新しい選択肢」と題して、2026年4月から始まった私の新しい職場についてお話しします。夜勤なし、立ち仕事なし。病棟から離れたいけれど、看護師として働き続けたい——そんな方に届けたい内容です。また一緒にここで、話しましょう。

  • この記事を書いた人

きよたかナース

職業はフリー看護師。18年間飲食店経営。40歳から看護専門学校に入学し、43歳で看護師になる。がん専門病院に勤務し、循環器・脳外科・血管外科・消化管内科経験あり。特別病床担当。老健、クリニック経験あり。 50歳をこえると、フルタイムの働き方は体力的にもつらくなります。 プライベートと仕事を両立しながら、自由な働き方ができる看護師が増えればいいなと思い、看護師の転職や働き方について発信しています。

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